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2025年12月14日

BEST6入選学生によるレポート!2024年度 JIA近畿支部学生卒業設計コンクール

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JIA近畿支部卒業設計コンクール」は、近畿圏にある国公立・私立21大学の建築・空間・住環境デザイン系学科から推薦された42作品から、わずか6作品のみが選ばれ、全国コンクールに推薦される名誉あるコンクールです。

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2024年度は、大阪公立大学、大阪芸術大学、京都大学、武庫川女子大学の優秀作品とともに、摂南大学 住環境デザイン学科から推薦された新出浩人さんの作品がBEST6に入選しました。

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新出さんの卒業設計作品「鎮まる建築」は、空海ゆかりの88の寺院「四国八十八箇所」のうち、故郷・香川県にある23か所の寺院をすべて巡って調査し、そのひとつ、根香寺の近くに敷地を設定して設計されました。

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八十八箇所を巡る「四国遍路」は、年配者の巡礼と捉えられがちですが、新出さんは、「迷い」や「悩み」を多様に抱える現代の若い人たちにこそ有効で必要な行為と考え、巡礼のきっかけになるように身近な建築を端麗にデザインしました。貴重な寺院群と崇高な四国巡礼を、現代と未来の問題を解決するための「もの・行為」として再定義し、あらゆる人々が深く思索しつつ、心を鎮めることのできる場となるよう願って完成させたことを、丁寧にプレゼンテーションしています。

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新出さんは現在、摂南大学大学院 社会開発工学専攻に進学し、本学でさらに活躍しています。今回は、入選作品についてのレポートを寄稿いただきました!


1.近畿支部での発表

4年次の卒業設計において、住環境デザイン学科より推薦を受け、JIA近畿支部学生卒業設計コンクールに応募しました。
近畿支部審査ではBEST6に選出され、近畿代表としてJIA全国学生卒業設計コンクールへ進む機会を得ました。
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近畿支部での審査は、4名の審査委員と9名の建築学生によって行われ、プレゼンテーション、講評、ディスカッションを通して多角的な意見交換がなされました。
他大学の学生による発表を聞く中で、自身とは異なる設計へのアプローチや価値観、物事の捉え方に触れることができ、議論を通して多くの新しい発見を得る機会となりました。こうした意見交換を通じて、建築に対する視野が大きく広がったと感じています。
また、自身のプレゼンテーションの課題を自覚する一方で、各学生が用いる多様なプレゼン資料や発表手法を間近で見聞きできたことも、非常に貴重な経験でした。
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本発表は模型を用いたプレゼンテーションであったため、事前に詳細模型を追加制作して臨みました。その中で、模型とパースを通して、空間のイメージをいかに具体的に想起させるかが、模型の表現において重要であると実感しました。
他の参加学生の模型は、規模・精度ともに高く、模型そのものが空間の説得力を持っていたことが印象的でした。

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2.全国コンクールでの学び

一次審査では、1分間のプレゼンテーションを4回行いました。限られた時間の中で自身の建築を明確に伝えるため、「何を伝えたいのか」を強く意識して臨みましたが、その前提として、自分自身が設計内容をどこまで理解できているかが重要であると感じました。
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質疑応答では、「似たような空間が続いており共感しづらい」「各寺院の特徴を、より設計に反映できたのではないか」といった指摘をいただきました。これらを通して、「何を思って設計したのか」「何を大切にして設計したのか」、そして「その建築を通して何を伝えたいのか」という設計の根幹が、プレゼンテーションにおいても問われるのだと、改めて実感しました。
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全国コンクールでは、より広い地域から集まった学生の発表を通して、自身がこれまで触れてこなかった土地の文化や社会背景、地域固有の課題に基づいた多様な提案に触れることができました。知らない文化や価値観、知識を含めて建築を捉える視点に出会えたことは、近畿大会とは異なるスケールで「建築とは何か」「デザインとは何か」を考え直す契機となり、非常に刺激的で意義深い経験となりました。

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3.作品について

香川県高松市、四国八十八か所霊場巡りの道中、根香寺の北西に、「鎮まる建築」を設計しました。その理由は、お遍路が観光化・商業化され、本来の意味で巡礼されていないと感じ、現代にこそ、自分自身と向き合い、精神的に落ち着ける場が必要だと考えたからです。都市化やデジタル化の進展に伴い、現代社会では、ひとりの時間や落ち着きを確保することが困難になっています。さらに、この高速化する社会で、人々は悩みや不安を発散できているのかという疑問から、この卒業設計を始めました。

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私は、日本建築に、人々に安らぎを与える静の空間として感じるものがありました。そこで、自分自身と向き合う巡礼、四国八十八か所霊場巡りと関連づけ、調査、設計を進めました。現代でも自分自身と向き合える、心身ともに鎮まる「日本的なる空間」を提案しました。香川、巡礼の地に建てられた日本建築が持つ独特の空間美学を現代建築に翻訳し、新たな空間としました。

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4.「鎮まる建築」 香川の遍路巡礼と思索空間

巡礼者にとっては、風化した休憩所や廃墟と化した善根宿の代わりに、遍路休憩所として、巡礼の振り返りの場となります。さらに、悩みを抱えている者や自分自身と向き合いたい者、祈りを捧げる者、何かに縋りたい者には、祈祷の場、思索空間として機能します。

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青峰山から瀬戸内海を望む場、虚の空間の水の揺らめきや音をただ眺めて自分と向き合う場、青峰山の自然に近い祈祷の場、休憩や交流が生まれる茶屋など、一人になりたい者から誰かと話すことで楽になる者まで、すべてのヒトに鎮まりを与えます。

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日本建築をそのまま建てるのではなく、静の空間としての要素を抽出し、現代建築やこれからの建築に応用することで、歴史的建築に限らず鎮まる場をつくることができると考えました。その要素として、虚と実の概念、そしてそれらが互いに絡み合うように減算、雁行形、境界の曖昧さ、所作を取り入れました。心の拠り所や想いを投影するため、建築内で重なった曖昧な空間を虚の空間とし、干渉できない「虚」をつくりました。「虚」には、薄く水を張り、水面の動きや光が人々の心の拠り所となり、想いや祈りの対象となります。

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さらに、本設計から抜き取った虚の空間を、各礼所に休憩所として配置することで、本設計をお遍路の巡礼路に組み込み、各礼所を繋ぎました。

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新出さん、入選おめでとうございます!素敵なレポートをありがとうございました。
後輩の皆さんも、先輩に続いて、学外発表の場にチャレンジしてください!