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2020年06月15日

毎日・DAS学生デザイン賞に入選!西尾梨香さんが建築部門で

2019年度住環境デザイン学科卒業生の西尾梨香さん(建築・環境デザイン研究室)が第51回毎日・DAS学生デザイン賞 大学生の部「金の卵賞」建築部門に入選しました。

毎日・DAS学生デザイン賞(建築部門)入選の表彰状「毎日・DAS学生デザイン賞」とは、若いデザイナーの才能を発掘するために毎年行われているデザイン・コンテストです。デザイン6分野で各々の入賞・入選作品が決定されます。西尾梨香さんは自身の卒業制作で応募し、見事に建築部門で入選を果たされました。課題発見力、課題解決力、空間的魅力などの視点から、西尾さんの建築デザイン力が評価されたと思われます。

作品タイトルは『居場所でつくる「むら」〜団地のむらへの回帰により高齢者と子育て世帯、両者の社会的孤立を解決する〜』です。

西尾作品のタイトルにある、「入居者の高齢化」、「子育て世帯の孤立化」は、西尾さんが寝屋川市の香里三井団地での住民への意識調査から導き出した団地の抱える課題を表しています。「入居者の高齢化」は、従来型のコミュニティーの維持を困難にし、高齢者の孤立化を防ぐ役割を担う持続的な新しいコミュニティのかたちが求められていることです。「子育て世帯の孤立化」は、入居者の入れ替え頻度が低く、子育て世帯が極めて少ないために、相談できる相手がおらず巨大な団地の中で孤立的存在であると感じていることです。西尾作品はこれらの団地の抱えるコミニティ的課題を建築デザインで解決しようとする提案です。

居場所でつくる「むら」_1枚目西尾さんは、先のコミュニティ的課題を解決するにあたり、人々の居場所に着目しました。これまでの固くなってしまったコミュニティの「つながり」に、新しい柔らかいコミュニティの「つながり」を緩やかに付加するために「居場所」をつくるという考え方です。

居場所でつくる「むら」_2枚目ここでは、2つの「居場所」をつくっています。1つは、有機的な地形と構造グリッドを巧みに融合して配置された住戸と通路がつくる、人間的スケールの路地空間です。この路地空間には、上下階をつなぐ吹き抜けや外の形式が見える小さな広場が設けられ、住民たちが集まっての井戸端会議や子ども達が安全に遊べる空間を提供しています。このような空間デザインから新しいコミュニュティが生まれ・展開するきっかけとなることを意図しています。

nishiorika_3もう一つは、特定の目的で人々が集まるための空間です。ここでは屋内空間として、フィットネス、図書館、食堂、お風呂屋さん、DIY作業所、みんなリビングが、屋外空間として田畑や花壇が設けられています。大きくは同じ目的の人々が集まることを通して、新しいコミュニティが生まれ・展開するきっかけとなることを意図しています。

居場所でつくる「むら」_4枚目この2つの「居場所」は全く新しい考え方というわけではありません。かつての漁村集落や農村集落にみられた共同空間と類似した「居場所」であるとも解釈できます。かつて「むら」にみられた自然発生的な生活空間構造の再解釈と現代的適用と言えるでしょう。

この奇抜なかたちの建築は、日本の古くからある集落(むら)の生活空間構造を写し活かしたものでした。この西尾作品にみられた、時間をかけて積み重ねて形作られた人々の生活の知恵を現代に活かす思考は、これからの持続可能な社会をつくるための重要な鍵の一つであると思います。

建築・環境デザイン研究室
准教授 稲地秀介